私のこころに響くもの アーカイブ
▼アンジェラ・アキ「サクラ色」のすがしい美しさ[07年3月11日(日) ]
▼安室奈美恵「Baby Don't Cry」に思わず元気をもらう[07年2月11日(日) ]
▼Mr. Children「フェイク」のガツンとした一撃[07年1月27日(土) ]
▼サザンオールスターズ「DIRTY OLD MAN〜さらば夏よ〜」にみる歌詞のすごさ[06年8月11日(金) ]
▼浜崎あゆみ「BLUE BIRD」の聴き方[06年7月2日(日) ]
▼平井堅「バイマイメロディー/hug」のふっきれた新境地[06年6月22日(木) ]
ヒット曲が世界を変える アーカイブス
音楽業界
チャート/ヒット曲
自分らしく生きる
私のこころに響くもの
大野靖之
関ジャニ∞
w-inds.
ENDLICHERI☆ENDLICHERI
WaT
平川地一丁目
バラエティが人間を壊す
CD の売り方を考える
伊藤悟 WORKS HOME

▼アンジェラ・アキ「サクラ色」のすがしい美しさ
[2007年03月11日(日) ]

 

 2006年の NHK「紅白歌合戦」で、あの DJ OZMA の一騒動の後で、見事に「HOME」をピアノを弾きながら歌いきった快唱が記憶に新しいアンジェラ・アキ。待ち焦がれた新曲「サクラ色」だ。

 決して激しくシャウトしない。比較的穏やかに発声している時間が多い。しかしこの人の声には「芯」がある。

 心の中sに「伝えたいこと」とsいう「核」があり、それを直球で、それもじっくりと、聴くものの心に響くように投げ込んでいく。

 「サクラ色」は、かつての恋愛と、そのあと苦しい日々を過ごして「自分」と「夢」をつかんだことを歌う。「あなた」という原点があったからこそ、「あなた」と離れてから自分がよくわかり、「夢」に向かって、「否定の言葉に押しつぶされても」「戦い続けた」という歌詞もすぐれものだ。

 人を本気で愛したことがあれば、その経験はとてつもない力になる、と私風に読み替えることもできる。その力が「サクラ色」に包まれた風景とともに湧き出てくるなんて、すごいことだし、すがすがしい。 アンジェラ・アキは、この歌をそっと歌い出す。決して急がない。しかし、私たちはぐいぐい歌の世界に引き込まれていく。

 サビに至っても決して肩ひじ張らないのただけれど、強く印象に残る。「気合い」というのは、強く「頑張って」やることではないことを教えてくれる。彼女が想いを言葉にきっちり込めて、聴く人に向き合って歌っているから、歌が確実に届く。

 彼女の「気」と私たちの「気」がぴったりと合う頃、彼女はちょっと遊び心を加える。「HOME」の一節が出てきて「そんな歌が聴こえる」というフレーズが付け加えられ、2度くり返されるサビの間に挿入されるのだ。

 この手法は下手をすると「HOME」パート2のような印象を新曲に与えてしまいかねないのだけれど、彼女はぎりぎりのところでそれを回避し、自然に、巧みに、軽い驚きと感動を添えて、それをやってのける。「HOME」よりも押しが強いこの曲に、かえってホッとする安らぎをスパイスにすることに成功している。

 そして彼女の美しい声そのものにうっとりとしてしまうことも、どうしても言っておかねばならない。彼女のキャラクターがきっと反映されているのだろうと思える、温かさに満ちているからだ。

 この CD シングルにはその「HOME」のピアノ・ヴァージョンも入っている。「紅白ヴァージョン」をまんま収録するのはさすがに無理だろうから、そのスタジオヴァージョンを聴けるのはうれしい。

 こちらも静かにしかし着実に、私たちを彼女の世界へいざなっていき、その声とメロディとピアノとで、改めて自分の「原点」を考え直してみたくなる気持ちにさせてくれる。

 終盤までくると、心がいつのまにか彼女に同調していて、最後のフェイクに感動が止まらなくなる。心地よい説得力だ。 どうかさらにいろいろなテーマで、多彩な歌い方で自己表現し続けてほしい。

 

  《 07年2月11日私のこころに響くもの