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▼WaT「ボクラノ Love Story」は聞き応え満点の大作![06年12月6日(水) ]
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▼WaT ファーストアルバム『卒業 TIME』はひたすら楽しい[06年3月1日(水) ]
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▼WaT ファーストアルバム『卒業 TIME』はひたすら楽しい
[2006年03月01日(水) ]

 

 3月1日発売 WaT のファーストアルバム『卒業 TIME〜僕らのはじまり〜』を聴いた。ひたすら楽しかった。バラードも含めて、とってもハッピーな気分になれた。 「明るく楽しくわかりやすい」ことは「高尚」な音楽ではない、などといまだに言われることがある。構成を必要以上に複雑にし、いろんなジャンルの音楽の要素を詰め込んでいくことが「音楽的」に優れているとされたりする。

 それは違う。難しくすればいいってもんじゃない。それぞれのアーティストが伝えたいことがまずあって、それを表現する手段はアーティストごとに様々で、どれがよくてどれが悪い、なんてことはないのだ。

 ここ数年、ジャニーズ系にしろハロプロ系にしろ、きちんと作り込みすぎて、実に凝っていていい曲ではあるのだけれど、はじけるような若さと、音楽をやっている楽しさを感じられる曲に出会うことが減りつつあった。

 ウエンツ瑛士も小池徹平も、本当に楽しそうに歌っている。それだけで「僕のキモチ」はあったかくなれるのだ。音楽が好きなことが終始伝わってくる。今の音楽業界に欠けているスキマに WaT は滑り込んだ。

 もちろん、注文はつけようと思えばいろいろ付くだろう。一部に定番的すぎる歌詞がある、バラードはもう一息……とか。だけど未熟でもかまわないのだ。背伸びしすぎて自分を見失うよりは、ファンやスタッフと一体になって成長していけばいい。

 歌詞にしても、経験を通じて磨いていけば、もっとすごい言葉が出てくる予感がする。

 「身体の自由 それがあたりまえと思っていたり 勝手な思い込みとか 常識とか偏見とか 自分を縛るものなど 捨て去って」[ウエンツ「はだか」]、「手に入れるために捨てたものたちへ」[ウエンツ「オトナシ」]、「この涙がいつか僕の足元固めてくれる」[徹平「夏日」]など、感性が研ぎ澄まされていないと書けないフレーズがいっぱいあってハッとするからだ。

 曲だって「オトナシ」[徹平]はしっかりロックンロールしているし、「はだか」[ウエンツ]は硬派なメッセージを乗せ切れるしっかりしたメロディが曲を支えている。シングルになった3曲以外では「前進」[共作]のネアカなポップさが心地よい。さらにおいしいメロディがこれからも生み出されていくだろう。

 シークレットトークでふたりが言っているように、ストリートでギターだけで歌っていた曲が、編曲によって見違えるようになったものがある。この体験がきっとこれからふたりの曲作りに活きてくるはずだ。

 それから歌い方と歌声。ふたりとも自分のことばで詞を書いているから、言葉がくっきりと明確に発音されていて、サウンドが厚くなっても埋没してしまわない。徹平のスイートさと、ウエンツの秘めた気合いもうまくミックスされている。絶妙のデュオだ。

 つまり当たり前のことなのだけれど、まだWaT をタレントの遊びだと思っている人がいるのであえて言えば、ふたりはれっきとした「シンガーソングライター」なのだ。そして本当にやりたいことをやっている。このアルバムを聴いてそれがよくわかった。

 これだけ楽しめるアルバムに苦言を呈するのは心苦しい。しかしそれは内容ではなく、売り方の問題だから、どうしても言っておきたい。

 この記事を書く前に「WaT コメント集〜その2[後編]」にこんなコメントをいただいた。

 「アルバム『卒業 TIME』の初回限定版を購入しました。やはり、シークレットトークは入ってません…しかし聞きたい! どうしても!! それがファンの気持ちですよね〜〜〜 通常版も買う? 無理です! 私は働く主婦だけど、そこまでお金がまわりません… ライブへ行きます。新幹線に乗って… DVDも購入予定です、生まれて初めてJUNONも買いました… 食費をさらに切り詰めるしかないのかなぁ?」
(hirotya さん)

 今回もシークレットトークは、私が買った「通常盤」に入っていた。アルバムの最後に15分間のトークだ。ただ、今回はホンネに少しベールがかかって大胆さがなくなっているのが心配。

 でも、それよりも、「初回限定盤」の36ページフォトブックも欲しいし、シークレットトークも聞きたいというファンは両方買うしかないのは、あんまりな仕打ちではないのか。

 ファンから金をできるだけ巻き上げようという売り方をレコード会社がやめる気配がないとすれば、私たちの声でストップさせるしかない。WaT のふたりにもファンの声に気付いてもらいたいし(ふたりの優しさにも似合わない)、ファンサイトやいろいろな所で、想いを訴えていこうよ。「前に進もうぜ」「つかむんだ新たな温もりをその両手で」! 「卒業 TIME」の問題もある。今回はインディーズ盤に入っていた3曲を全てそのまま録音し直さずに収録しているけれど、それならば記念すべきインディーズ盤を売りまくって、アルバムには新録音を入れるという手もあったのではないか。

 まだわからないことだらけの「卒業 TIME」のシングルなのだけれど、もし今回のアルバムの売り上げを加速するために、追加生産をせず、iTunes での販売も止めたのだとしたら、せこい。「僕のキモチ」のシークレットトークでウエンツが言っていたように「だいたい大人ってきたないんだよ、そういうところ」。

 ふたりの意見はこういう販売方法にどの程度反映されているのだろうか。もし全くプロダクションやレコード会社の言いなり状態なのだとしたら、早くもっともっとビッグになって意見を言えるようになってほしい。いや、きっとなれる。

 

    06年5月14日WaT》