▼日本の Rock Era
[2005年10月10日(月) ]

 

 何十年と蓄積されたヒット曲の数々をどう遺して行ったらいいのだろうか。メッセンジャーズの「気になる女の子」のようにCMに使われたり、カバーされたりして再び脚光を浴びた曲は幸せである。

 『オリコン』で新記録が出た時いつも気になるのは、実は全てに「1968年以降について」という限定がついていることである。『オリコン』のチャートは1968年に始まり、それ以前は存在しないからだ。

 だから、戦後に限定しても、美空ひばり、島倉千代子、橋幸夫、ザ・ピーナッツ、石原裕次郎などかなりの数のヒットを出したと思われる歌手は記録の話に登場しない。しかし、こうした歌手がビッグであり、その後の J-POP にまで影響を与えていることは論を待たない。それが埋もれてしまっていいのだろうか

。 米国ではどうか。今チャート誌として最も権威のある『ビルボード』の創刊はなんと、1894年。音楽業界誌としてである。チャートが初めて掲載されたのが1940年で、レコードセールス・エアプレイ・ジュークボックスの3つのシングルチャートが生まれている。

 その後、1958年にこの3つを統合して、今の “Hot 100” という総合シングルチャートが始まっている。

 現在までに、レコードセールスはバーコードによるかなり正確な数字になり(調査会社がある)、エアプレイもラジオ局のプレイリストの集計に代わって実際にかかった回数をカウントするようになり、ジュークボックスでかかった回数はその衰退とともにすぐになくなり、今や有料デジタルダウンロードの回数が加えられるようになった。これらの要素をミックスする比率も変化し続けている。

 米国には “Rock Era” という言葉がある。「ロックの時代[年代]」とでも言うべきか。1955年7月にロックの始まりと言われる、ビル・ヘイリーとコメッツの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が『ビルボード』の “Best Sellers in Stores chart” つまりセールスチャートで1位になった。その年以降、現在までをまとめて呼ぶ言葉だ。

 それほどロックの出現は大きく、現代の音楽の歴史はここから始まるとしている。この “Rock Era” の全てを『ビルボード』はカバーできるのだ。だから通算記録も“Rock Era” において……と定義すればわかりやすい。
 
 ここで提案である。

 ここまで大きくなった『オリコン』である。音楽文化に寄与するために一大事業をやってはどうか。1967年より前のレコード(まだCDじゃない)売り上げをわかる限り調査してアバウトでいいから年間チャートを作って、1945年くらいまでをカバーして行くのだ。

 それを後世に残せば、とりあえず日本の歌謡曲/ヒット曲史から大切な曲が消えてしまわなくなるだろう。ぜひ真剣に検討してほしい。

 

  06年3月31日チャート/ヒット曲 》