▼光 GENJI「勇気100%」〜私を支える歌 その25
[2006年12月18日(月) ]

 

 ジャンルを問わず、自分の好みを狭い範囲に閉じこめて限定せず、広くヒット曲を聴き続けて来て本当によかった、とつくづく思う。

 心が疲れた時、たくさんのヒット曲たちが、その時の私の「症状」に応じて、私の心の中に隠れている、私自身も気づいていない「回復力」を引き出してくれる。たくさんの曲を聴けば聴くほど、私に合った「処方せん」が作れるようになる。

 1987年、光 GENJI の登場は衝撃的だった。7人のメンバーがローラースケートでカッコよくダンスしながら、クールで洗練されたポップスを歌う。7人の声の重ね方もどんどん進歩していき、95年に解散するまで一時代を築いた。

 光 GENJI がさっそうと登場した頃、私はラジオの深夜放送にかかわり始めていた。また、音楽業界では、CD が登場し、あっという間にアナログ盤と交替していく、歴史に残る時期だった。

 チャゲ&飛鳥[現在は CHAGE and ASKA 表記]、特に飛鳥涼が作る楽曲は、複雑だが美しくメリハリのあるメロディで見事に構成されていて、「STAR LIGHT」「ガラスの十代」「パラダイス銀河」と続くデビュー以降の3曲は、強烈なインパクトを持って、シングル冬の時代を打ち破る起爆剤になった。 1988年は、彼らの曲が『オリコン』年間チャートのトップ3を独占するという記録を打ち立てている。

 私はこのブームを、ラジオ局と予備校で見ていた。コンセプトを立て、チームを作って、ブームを作り出す戦略とそれを実行していくプロセスを目の当たりにし、ローラースケートで身を立てようという若者が続出するシーンも目撃した。そして自分も彼らの曲のとりこになっていくことで、音楽シーンの変化を体感した。

 とりわけ「パラダイス銀河」はよくできた曲で、大人には見えないパラダイスへ、コロンブスの精神を持って、「心の傘ひらき」「しゃかりき」に向かっていこう、と夢と愛をテーマにした飛鳥涼の詞と、ヒット曲はこう作るというお手本のような曲とアレンジは、新時代のポップスの誕生だとさえ思った(この曲でレコード大賞も取り、その時だけ口パクでなく泣きながら歌ったのが鮮明に記憶に残る)。

 しかしその「新しい風」は、90年代に入るとドラマ主題歌がモンスターヒットを連発し、微妙に流れを変えていく。だから、光 GENJI そのものは、どんどん新しい領域の曲にチャレンジしていくのだけれど、やや空回りし、セールスは徐々に落ちていく。

 だから私は、もちろん初期の大ヒットも大好きで、カラオケでもひんぱんに歌うのだけれど、セールスが下がっていってからの作品にも、たくさん名作があることを知ってほしいと痛切に思っている。

 「愛してもいいですか」などはいま誰かがカバーしてもじゅうぶんヒットしそうなすばらしいバラードだし、しゃれた構成の「君とすばやく SLOWLY」も聞き応えがあるが、覚えている人は少ないだろう。そして、NHK の超人気アニメ「忍たま乱太郎」の主題歌にもなった名曲「勇気100%」も、乱太郎ファンを超えて大きくは広がっていないように感じる。

 カラオケに行った時、最後にどの曲で決めて終わるかは、考えるのが楽しみだし、テンションを保って気分よく帰るためにも、大事な選択だ。私はかなりの確率で「勇気100%」を選ぶ。

 自分の中から「元気」を呼び出したい時、この曲は本当に重宝だ。明るいメロディラインの連続に、心が快く反応できる歌詞、歌い終わると生まれ変われる、と言ってもいい。

 「やりたいこと やったもん勝ち」「夢はでかくなけりゃ つまらないだろう」「きみと追いかけてゆける 風が好きだよ」といった歌詞で気持ちを高め、サビへとなだれ込む。「まだ涙だけで終わる ときじゃないだろ」なんて自分に言ってあげると、歌の頼もしさに思いっきりうなずける。

 曲の終わり方も劇的で、ラストのフレーズ「ぼくたちが持てる輝き 永遠に忘れないでね」を、気持ちよく声張り上げて歌い切ると、ものすごい達成感を感じられる。

 実はこの曲と似た構成の曲のことを、最近書いた。関ジャニ∞の「関風ファイティング」だ。どうして似ているのか。作曲がどちらも、私の敬愛する馬飼野康二さんだからだ。光 GENJI では馬飼野さんの「この秋・・ひとりじゃない」も、それはもうすんばらしい名曲だ。

 『ヒット曲が世界を変える!』発売に関連した仕事で、嵐のように忙しかった1週間がやっと終わった。その疲れをいやすべく、ふとこの曲を思い出して、いま何度もくり返し聴いている。「そうさ100%勇気 ぼくたちはぼくたちらしく どこまでも駆けてゆくのさ」……本当にそうだ。「新しい朝 かならずくるさ」!

★このシリーズは、書籍版『ヒット曲が世界を変える!』にも収録されていますので、さらに本の方で読んでいただけると幸いです。編集者の鈴木さんは「改めて歌のエンパワーメントに感動した。いいよね」と感想を述べて、第4章ではあるものの、本の「読みどころ」だと語ってくれています!

 

  《 05年8月15日自分らしく生きる 07年1月23日自分らしく生きる》