4月10日、幸運にも堂本剛の誕生日のライブが当たって、東京はお台場の「エンドリ・ウォーター・タンク2」へ行ってきた。
ライブを通して、ENDLICHERI
☆ ENDLICHERI の堂本剛=ケリーさんが今やりたいことの輪郭を感じられるようになってきた。
自分の胸の中には無限に広がる宇宙があり、オーディエンスの胸の中にも無限に広がる宇宙がある。その宇宙どうしが、愛を交歓し合う空間が「エンドリ・タンク」であり、それを提供しているのが
ENDLICHERI ☆ ENDLICHERI なのだ。その意味については最後にまとめるとして、とりあえずライブを追う。
前回行った3月16日の歌唱どころではない。1曲目の「ソメイヨシノ」の迫力は、この人のヴォーカルはどこまで進化するのだろうと空恐ろしくなるくらいで、気絶しそうになると形容しても過言ではないくらいだった。 ケリーさんの身体にはスピリチュアルな「気」が充満し、自在に多彩に変化する声は絶品の極みだ。
とりわけ曲の最後のひとつ前のメロディを何度もくり返して、今の想いを次々と新しく歌詞にしていったところは数分間に及び、いつまで続くのか、そして次にどんな言葉が紡ぎ出されるのか、息を飲んで聴き入った。
歌で
MC を聴いているようにさえ感じられ、迫真のメッセージを伝えていた。「僕は生きるよ」「誰か愛の意味を教えてよ」……あたかもライブの、ひいてはENDLICHERI
☆ ENDLICHERI のテーマを提示しているかのようだった。
「ファンキー」[funky]にはいろいろな意味がある、とケリーさんは言っていた。確かに、“funk”
はマイナスの精神状態を表す言葉だから、「ファンキー」には「怖がっている」「臆病な」(Coward!〜ファーストアルバムのタイトル)「落ち込んだ」という意味があり、一方、「泥臭い」からアフリカ系アメリカ人のリズムを基調にした音楽を指すようになり、そこから「生き生きとした」「いい感じの」という意味へも転じた。
「ソメイヨシノ」で開幕したあとは、言葉の多義性に合わせるかのように、いろいろなファンクが展開されていく。その中には世界中の文化・音楽・楽器などへのリスペクトがたっぷり込められている。 「Blue
Berry」「闇喰い Wind」「美しく在る為に」「Six Pack」とファーストアルバムの曲たちが、色とりどりのファンクとなって、今回のお台場セッションの当初よりたくさん演奏される。ケリーさんは、どんどん身体も動かしてファンクするようにアジる。
セカンドアルバムからの曲は「ENDLICHERI
☆ ENDLICHERI 2」「傷の上には赤いBLOOD」「空が泣くから」「Take U 2 The Rainbow
Star」そしてアンコールの「Rainbow Wing」。こちらはさらにいっそうファンクな要素を入れてあるから……というより完全にケリー流ファンクに消化されて作られているから、初めから「いい感じの」ナンバーとして安心して聴ける。
とりわけ「傷の上には赤い
BLOOD」のからっとしたリズムとメロディは新境地を代表していて、バンドのノリも最高だ。
どの曲も「ケリーさんの曲」ではなく「バンドの曲」になり切っていて、どのメンバーもテンションが高いこと高いこと。今回はスティーブさんの小粋なパーカッションが印象に残ったし、ギター合戦もヒートアップしていた。 そして私がこのライブの中核にあると確信したのがアンコール前の最後の曲だ。「Chance
Comes Knocking.」。まずバンドメンバーが、メンバーの組み合わせを変えて楽しんでいるところを見せてくれる。
その後はオーディエンスの番だ。「Higher」コールに合わせて、左右の手を上げて行く。ケリーさんが10代から始まって50代以上まで世代を区切ってやらせ、続いて「男だけ」「かわいい子だけ」などをやってエンディングへ向かう。
この長い「Chance
Comes Knocking.」の間に、たぶんオーディエンスとケリーさんの最も直接的な「対話」が、両者の宇宙の間で起こっているはずだ。この時間が最も大事にされているように感じた。
まず「ソメイヨシノ」で扉を開き、ENDLICHERI
☆ ENDLICHERI の世界へ招き入れる。ケリーさんのひたすら美しい声は私たちを酔わせ、私たちに空間提供の意味を感じさせる役割をじゅうにぶんに果たすからだ。
そしていろいろなファンクを味わった後の総仕上げが「Chance
Comes Knocking.」における愛の交歓だ。オーディエンスは、いっしょに飛び上がるだけで、手を上げ身体をファンキーに動かすだけで、ケリーさんと宇宙を共有する。
この日のケリーさんの
MC はことのほか短かった。途中の遊びも少なかった。日によってトーンが大きく変わるので断言はできないが、自分の目的が鮮明になり、その目的実現を時間をかけても成し遂げる決意をし、覚悟を固めたように見えた。
「人が生きていることが大切で、人が生きているからこそ表現できる」と、セカンドアルバムもライブも、生命と愛をテーマにしていると明言した。「胸の中の宇宙にたくさんの景色を浮かべて」聴いてほしいと歌ったアンコール曲「Rainbow
Wing」の後、彼は「愛を信じる」ことを貫くと宣言し、やれる人はいっしょにやりたい(やってほしいという呼びかけと微妙に異なる)と語り、「僕はもう終わりのない旅に出て
しまったから」「愛を信じ続け」信じられるように表現していく、と言って母船の中へ乗り込んで行った。
一方この日は彼の28歳の誕生日。メンバー紹介の後、ケリーさんのギター&ドラムプレイに乗せて、トランポリン大会があり、このお台場セッションの途中から登場したサンカクくん(誰がやっているのだろう)から始まって、メンバー何人かが挑戦した後、突然ケリーさんが引っ込んでどうしたのかと思うと、ケリーさんとサンカクくんがバースデーケーキを運んでくる。
ケリーさんは「Happy
Birthday to ME! Happy Birthday
to ME!
Happy
Birthday,Dear Ore![オレ]……」とバースデイソングを自分で歌い、ロウソクも自分で並べ、ふき消して、ドラゴンのかぶり物をきたままチョコを食べて見せるなどのサービスをして簡単に「儀式」は終わる。母親へ強く感謝した言葉をオーディエンスの心に残しながら。
ケリーさんの友だちのハナさんが会場の写真を撮りまくる。何か新しい企画を考えてのことだという。どんどん前進していく
ENDLICHERI ☆ ENDLICHERI
がいる。
ケリーさんの覚悟は、「ケーキ食べたい」「かわいい〜」と叫びまくるテンションの高いオーディエンスたちとどう切り結んだのだろうか。
ケリーさんの歩む道が「孤高の道」にならないよう、私も共に歩き続けよう。今までになく、そんな決意を何度もしたくなるこの日のライブだった。