東京はお台場にあるエンドリ・ウォーター・タンク2で行われた「ENDLICHERI
☆ENDLICHERI presents Neo Africa Rainbow Ax FUNKY PARTY
2007」の初日(3月16日)に行って来た。
タンクの東側はすぐ海。かつては海だった埋め立て地に、エンドリが泳ぐことになる。横浜・みなとみらいのタンクよりやや大きい感じがする。前回よりいっそうファンクな音楽が流れているタンク内に入り、再びドラマを見られることに興奮する。
しかし私はまだ、ライブを「見る」「聴く」ことにこだわっている自分を発見して、ライブの途中でがく然とする。「感じて」「楽しんで」「身体を動かして」味わうのがケリーさんのライブなのだ。
いきなり「ソメイヨシノ」を、ほぼシンセの音だけをバックに歌い始める。この1曲を聴いただけでライブに来た価値があるほど、体中に震えが走る。桜をコンセプトにした光の演出も感動を際立たせる。
ケリーさんのヴォーカルは、神がかり的な領域に達してきた。フェイクだけではない。ファルセット、ビブラート、こぶしのような節回し……ありとあらゆる歌唱の技法をケリー流に消化して、そのすべてを吐き出す感じだ。
あの「ソメイヨシノ」が、全く別の作品かと思うほど違う曲に聴こえる。時として詩の朗読をしているのではないか、と錯覚するような唱法の部分もある。フレーズとフレーズの間のとり方も、自由自在、千変万化、それでいて曲は何のよどみもなく流れて行く。恐ろしいほどすごい。
平凡なプロデューサーだったら、このケリーさんの歌声を聞かせ切ることを第一にショウを構成するだろう。しかし、ケリーさんは、そんなショウには決してしない。最近やっとその意味がわかってきた。
3月16日のライブは、ENDLICHERI
☆ ENDLICHERI のファーストアルバム以前の曲は、その「ソメイヨシノ」と「Blue Berry」「濡れ鼠」の3曲だけだった。あとはいよいよ4月11日に発売されるセカンドアルバムからの曲が聴けた(「空が泣くから」を含んで)。
早くアルバムを手に入れてじっくり聴きたいと思う、輝ける曲たちがつまっていた。「Take
U 2 The Rainbow Star」とアンコールの「Rainbow wing」が印象に残った。とりわけ一瞬「歌謡曲調」かと聴けるメロディを持つ、ブルージーなソウルバラード「Rainbow
wing」は、ケリーさんのヴォーカルが楽しめつつ、それに混ざり合う音たちのバランスもよく、大好きになりそうな予感がしている。
そして実はもう1曲、新しいアルバムからではない曲がある。ラストにいつも通り長〜いヴァージョンで演奏された「Chance
Comes Knocking.」だ。ここにこのライブのカギがある。
バンドのミュージシャン立ちが代わる代わるオーディエンスをリードして、リズムに合わせていっしょに楽しもうと呼びかける。かけ声であったり、身振り手振りであったり、飛び跳ねであったり……。
とりわけ最後に仕切りがケリーさんに戻って、「Higher」コールに合わせて、左右の手を上げて行くところでは、ケリーさんが「10代の人だけ!」「20代の人だけ!」「30代以上の人だけ!」「男だけ!」と対象を区切って手を動かさせる。男には厳しくて数回連続でご指名があった。私は何回も懸命に手を大きく上げて、気持ち良くパフォーマンスした。
私はこの時のケリーさんの楽しそうな「気」を感じて、ハッと気付いた。ライブってそもそも、アーティストとオーディエンスが、こうやって楽しむものだったのではないか。ファンクのスピリットもそこにあるのではないか。
ケリーさんは、ステージから放たれる音楽にオーディエンスが反応して、楽しんでこそライブで、これでもかと自分が歌ばかり歌うのがライブではない、と考えているのだろう。「愛の循環」である。
「Chance
Comes Knocking.」で楽しむだけ楽しんで、最後にケリーさんが「やろうかやるまいか迷ってたんだけど」と大きく階段状のセットから飛び降り、オーディエンスもそれに合わせて飛び上がってライブがビシッと終わった。みんなが宇宙を共有した瞬間……だといいな。 ライブ全体の雰囲気も、2006年横浜と大きく変わった。今までのセッションとは「次元」が違う、あるいは高い「ステージ」に上がった、あるいは別の「宇宙」で行われている、そんな表現がしっくりくる。
「これからも飽きっぽいのでどんどん変わります」「毎日同じに生きててもつまらなくない?」とケリーさんが宣言しているのは、ライブの内容だけではない。
入口にサンカクくんがいて、中までの通路の床には水槽が置かれ、足下から水が見える。会場内もどう形容したらいいのか、サンカクくんは大活躍で、龍の形のライトが天井に張り巡らされ、正面の左右には神社仏閣にありそうな吊るしものが下がっている(わかる方がいたら教えて下さい)。
驚いたのはマザーシップ。ピラミッド型の
UFO が使われるのだ。順を追って述べよう。
「ソメイヨシノ」を歌ったあと、インスト曲「ENDLICHERI
☆ ENDLICHERI 2」による光のページェントに移るのだけれど、これがまた今までと比べて渋くなっていて、荘厳な作りになっている。
それが終わるや、何とその
UFO がおりてきて、そこからケリーさんが登場するのだ。そして「Blue Berry」へなだれ込む。アンコール後も、バンド全員が
UFO の中へとひとりずつ消えてゆき、発信音と到着音まで聞こえてライブが完全に終了する。
そしてバンドとの息も最高に合っている。ケリーさんを含む、ステージ上の全員からまとまった「気」を今までになく強く感じた。どんなアドリブを誰がやっても軽く対応できそうだった。
そんな中でのケリーさんのギターソロは、これまた今までになくオーディエンスの反応に合わせて、当意即妙に変化し、まるでギターで
MC をしているようだった。ギターがしゃべっているようにケリーさんの宇宙の一部となっていたのだ。
まだまだ終わらない……ので、後編へ続かせて下さい。