誰が何と言おうと、私はこういう曲が大好きで、いま日本でこんな明るい曲を「リアル」に歌えるのは関ジャニ∞しかいないかもしれない。
実はこの記事を書く段階で、CD を買っていない。今どきは便利で、PV を見られるサイトがあって、メンバーの「ほがらかな」「のびやかな」「とびっきりネアカな」映像をそこで楽しみながら、とにかく書きたくて第1弾の感想をアップすることにした。
「きばってこーぜ」に始まるサビはもう一発で覚えられるし、サビまでのメロディもおいしくてまたもや馬飼野サウンドかと思いきや、作詞が上中丈弥(THE
イナヅマ戦隊)で作曲がピエールで編曲が白井良明。すっげぇ組み合わせだ。とりわけ日本ロック界の重鎮ムーンライダーズの白井良明の編曲は、センス抜群でユニークで「遊び」まくるアレンジが多いので、関ジャニ∞にぴったりはまっている。
宣伝用キャッチフレーズに「ファンクをベースに男くささをフィーチャーした」とあるのだけれど、ちょっと違うような気がする。
確かにいつになく「男」の生き方を歌っているし、わざといわゆる「男っぽく」声を出しているところもあるのだけれど、強くてタフで頑丈で……といった「定番」的な(例えば「マッチョな」)男性を彼らの歌からイメージすることはできない。
歌詞に強気な言葉が並んでいても、どうしても私には「優しく」「温かく」聞こえてしまう。あるいは、男性でなくても、少し言葉を置き換えれば、女性版にあっさりなるような「応援歌」なのだ
この曲を聴くと、恋愛がとても下手だった20代をどうしても思い出してしまう[詳しくは4月1日の記事を参照]。自分に自信がなく、自分を愛していない者に、他者に共感したり、他者を愛したりできるはずもない。人間関係を作るのも下手で、落ち込んでばかりいた。
その頃この歌を聴いていたらどれだけ励ましになったろうと思う。自分の中にある可能性に少しは気付いていたのではないかと思う。 カン違い、内心びくびく、焦り、薄情、涙の味、情熱のテンションも放物線を描いて落ちる、いい人止まりで終わるオチ、虚勢……当時の自分にかかわるキーワードが次々出てくるのでびっくりする。この「虚勢」も、虚勢を張るのが「男道」と歌っているのだけれど、同時に、無理しなくてもいいんだよ、とも聞こえてくる。それは歌詞の核が終盤の「明日は明日の風が吹く」にあるからだろう。
これはかのテレビ人形劇「ひょっこりひょうたん島」で大統領ドン・ガバチョが「今日がダメなら明日にしまちょ 明日がダメなら明後日にしまちょ 明後日がダメならしあさってにしまちょ どこまで行っても明日がある」と歌ったコンセプトを受け継いでいる! と勝手に断言して興奮してしまう私……。
そのノーテンキさを支えるのがもうひとつの本物のキーワード「バイタリティ」だ。今回も「バイタリティ」を本気で全開にできる彼らならではのキャラクターが、聴く者の「出せそうで出せない」元気を引き出す。
PV も破格に面白い。ホントに「きばって」るメンバー。ひたすら手を大きく振って歩く姿や、眼からなぜかまっすぐに飛んでいく涙もけなげだ。普通ではまずやらない小道具の使い方をしていてびっくりしたし。
そうしたありえないほどのオーバーアクションが逆に人生の真実を見せてくれて、日常の中で肩ひじ張りがちな気持ちをすーっとラクにしてくれる。これもデフォルメされた人形がオーバーアクションするから人間のある部分がリアルに表現できる「ひょうたん島」に通じる。
実際、構成としても、そのオーバーアクションしている姿を自分でちゃかすようにできていて、リアルを見つめ直して、次へ行こーぜ、となる。「男道」なんてテーマにありがちな押しつけがましさや説教調の「真逆」で、人間の弱さもしっかりと描かれている。
メンバーを包むサイケなアニメや映像はかなりレトロ調。ドーンと空に飛び出る文字は、1960年代から使われている技法だ。古くさい「男道」を歌うと見せて、それを超えた現代の「人の道」に変換する装置のようだ。
「○○こーぜ」と連呼していても、すっとぼけていて、のんびりしていて、ちょっと弱気で、要はホントに人間くさい。「ズッコケ讃歌」というタイトルの方がふさわしいくらいのトーンだ。 すばらしいのは終始変わらないメンバーの笑顔だ。いろんな経験で味付けされたその表情は、それだけでホッとできる。作り笑いが多いこの業界の中で貴重な存在だ。どうしてこんなに楽しく「仕事」ができるんだろう。
あー早くカラオケで歌いたい。8→1