▼NEWS のこと、「支援」する視点で
[2007年01月04日(木) ]

 

 私はこのブログでプライベートなことはわずかしか書いていませんが、高校講師、予備校講師を長く続け、そして今また子どもたちからの相談やカウンセリングにかかわっています。

 そんな経験から考えて、「NEWS が戻ってきた、でも納得がいかない」の記事で書いたことに対して、「厳罰」こそが大事なのだ、という意見がたくさん寄せられていることにショックを受けています。そこで改めてコメントさせていただきます。

 このブログの性格と離れてしまうので詳しくは述べませんが、いま問題とされている10代の犯罪については「厳罰」でのぞんでも解決しないことが明らかになりつつあります。それぞれのケースを見ていくと、犯罪に至るまでの経緯に、生まれてから「愛される」経験を持たないで来たという場合がかなり多く見受けられます。

 私が対応した相談やカウンセリングでも、ひとりでも親身になって自分を大事にしてくれる人がいたら(人生がいい方向へ)変わっていただろう、という声を何度も聞いてきました。人は、ひとりでもいいから誰かに(それは親でなくても構いません)大切な存在だと思ってもらえないと、生きるエネルギーを生み出していくことができなくなるのです。

 現状は「甘やかす」の反対です。子どもたちは、親からも教員からも仲間からも(「いじめ」を考えてください)ひとりの人間として「愛」を受け取ることがでず、なおかつ「勝ち組」「負け組」に分けられてしまう競争の中に放り出されています。

 今回の問題にしても、どうして全てを個人の問題にしてしまうのでしょうか。大人側の責任はなぜ問われないのか、と私が言っているのをどうして曲解するのでしょう。

 「未成年飲酒禁止法」の趣旨は、飲んだ側よりも、飲ませた側、飲んでいるのを止めなかった側により責任がある、ということです。また社会的には18歳で許容されている飲酒を20歳まで禁止することが矛盾しているので改正した方が良いという声も出ている、簡単に言えば「現実にそぐわない」法律です。だから警察等もアバウトに運用しているのです。

 他の法律とは性格が異なり、「法律を破った」ことを罰するより、その後どれだけ酒で心身を痛めないようにするかに力点を置いて運用されているのが実態です。それが所属する企業や事務所ごとに制裁が変わるのであれば、ひとつ間違うと「私刑(リンチ)」にも近い対応になりかねません。だから慎重にやってほしい、と私は言っているのです。

 「酒の飲み方」など誰も教えてくれません。いや教えられる大人がいなくなってしまったのです。泥酔しないように、自分と周囲の安全と健康を守れる飲み方があるはずです。

 「飲み方」を教えてもらえないのに、飲むと、現実的な法の運営上は厳罰にはならないのに、属している組織や社会の「雰囲気」によっては、厳重に処罰されるのは矛盾していませんか。

 それから内博貴に関して言えば、関ジャニ∞と NEWS を掛け持ちしていました。両方の正式なメンバーだったのです。ダブルブッキングや無理な移動もあったとききます。これは相当なストレスであり、そんな状態を事務所の都合で強いられていたことも考慮に入れられるべきではないでしょうか。

 さらに言えば、堂本剛がライブで何度も、芸能界/音楽業界に入って人間不信になった、と語っているように、芸能界/音楽業界は一般社会よりも弱肉強食で、友情よりも裏切り、約束不履行、陰謀……その他ありとあらゆる非人間的なことに出会ってしまう業界でもあります。

 そこに10代から入ることがどれだけ大変なことか。

 何度でもくり返し書きますが、私はそんな芸能界/音楽業界にもてあそばれて、一生を台なしにしかかった10代を何人も見て来ています。

 「犯罪」=悪、とだけしかおっしゃらない、それをどう防止していくかには「厳罰」としかおっしゃらない、そんなコメントが多いことに悲しくなります。

 しかし人間の歴史をひも解けば、力による「禁止」で問題が解決したことはまれです。

 身近な例で言えば、バイクの免許を取ることを禁止していた高校が、免許取得を許可する代わりに学校でバイクの講習を受けることを義務づけて徹底的に安全運転を鍛えたら事故が激減した、という例があります。「禁止」されているからかえって乗りたくなり、かえって無免許で危険な運転をしてしまっていたのです。

 ですから、子どもたちの中に温かい人間関係が薄れている、温かい人間関係を創り出す力が弱くなってきていることに取り組まなければ、たぶん、何も変わりません。犯罪がどうして起こるか、という社会的心理的なものまで考えなければ犯罪はなくならないのです。

 必要なのは「愛」です。 これはフジテレビやジャニーズ事務所だけの問題ではありません。芸能界/音楽業界が、ひとつのコミュニティとして10代を抱え込んでいるのですから、 10代の「未来」や「希望」を簡単に「弱肉強食」の論理で砕かないような配慮も必要なのではないか、と言っているのです。各事務所にカウンセラーを置くことを検討してもいいくらいです。

 ファンの方たちは「信じて」ふたりの復帰を待っています。それこそが「愛」ある対応でしょう。ふたりが、これから自分の道を自分の力で切り開いていけるよう応援するのがすじで、厳罰だから当然だ、と言ってみても空しいばかりです。

 よし子さんと rei さんと涼寛さんのコメントをぜひ、じっくり読んでみてください。

 「一度過ちを犯してしまえば、やり直すチャンスも与えられないのでしょうか? 青少年が間違ったのなら、社会復帰させるまで見守るのも大人の義務だと思います。復帰させることがまるで何も罰を受けてないかのように言われてしまうのは、あんまりではないでしょうか? これまで謹慎という形で罰を受けてきているわけですから。『復帰』ということにばかり目がいってしまうのが、世間というものなんでしょうね。
それに復帰することだっては決して楽なことでもないと思うのですが。また、他の子への見せしめという考えも、一人一人を人として尊重してる考えだとは思えません。誰だって己の人生を生きる権利はあるのです。大勢の為に数人が犠牲になっていいなんていう道理はありません。まるで昔の公開処刑のようなものですよね。人は間違いを犯しながら、だんだん成長をしていくものです。何人かの方の意見を読ませて頂くと、まるで復帰をするのが教育的に良くないことのように受け止められてしまうのが悲しいです」(よしこさん)。

 「一部の方のコメントを読んでいると、とても悲しい気持ちになります。同時に、この国でなぜ『いじめ』がなくならないのか、とてもよくわかるような気がしました。第三者から見れば、明らかに『いやがらせ』としか思えないようなコメントでも、それが一見理論的であれさえすれば、何を言ってもいいと勘違いしている人。あるいは平然と居直る人。そして罰を与えるのが大好きな人がこんなにも多いことに、あらた
めて驚いています。子ども社会は大人社会の縮図です。このコメント蘭にも『いじめ』があふれているように感じました。罰を与えるのは、だれにでもできる簡単なことです。でも、そのあとの人生の方が長いんですよね。失敗しても何度でもやり直せることを肌で伝えられる大人が、はたしてどれくらいいるのでしょうか」(rei さん)。

 「養老孟司氏のベストセラー『超バカの壁』の書き出しは『未成年のタレントが酒を飲んで暴れたことがニュースになりました。(中略)昔は若い者が酒を飲んで暴れるぐらい当たり前でした。羽目をはずした奴をきちんと叱る、それでさらっと忘れてあげるのが世間の常識でした』。つまり、悪い事はとことん叱るが、その人の将来や可能性まで摘む必要はない。社会にとってもそれはとても損なことだから、ある程度までで許してやる。内君や草野君や元モー娘。の加護ちゃんもいい加減許してやればいいのに、と思う。今はこのような『ちゃんと叱れる大人』がいない。伊藤さんのブログにもある『酒やタバコの飲み方を教えてくれる大人』がいない。『だからこそ自己責任の元厳しい処分を…』。そこまで自分に厳しい大人がいれば政治家・官僚・企業のお偉いさんや一級建築士の様々な不祥事は起sこらない。それを通り越して『子供に厳しく』しても足元を見られるだけで、現実にこのようなお利口な子供達がいじめを行うのだ。s書きたい事が沢山あるのにまとまらない! だけどreiさんのコメントには激しく共感した。それは事実」(涼寛さん)。

 3人に全く同感です。間違ったり、ヤバいことをしそうになったり、脱線しそうになったりせずに、成長していった人なんてどれだけいるのでしょうか。試行錯誤して悩んで迷って人は成長していくのです。私は、今回のことはじゅうぶんに「やり直せる失敗」であると考えますし、ふたりが人生に失望してしまわないことを祈るばかりです。ファンの人たちとともにエールを送り続けたいと思います。

 そして周囲の大人たちの責任が問われない、ただ「飲んだから悪い」で終わらせてしまう無責任な、人間に対する優しいまなざしのない社会のあり方をこわいと思います。コメントを読んでのショックを超えて、Love Fighter でありたいと思わずにはいられません。

 

  《 07年1月3日音楽業界 07年4月19日音楽業界》