▼「紅白」と「レコード大賞」と……なんだかなぁ……
[2006年12月05日(火) ]

 

 NHK「紅白歌合戦」出場者と、「レコード大賞」各部門受賞者が発表された。いろんな意味で「なんだかなぁ」と思う。

 まず簡単に言えば、今年の大ヒット曲がボロボロこぼれ落ちていること。『オリコン』の現段階での年間チャート[1)KAT-TUN、2)レミオロメン、 3)修二と彰……]のトップテンに入っている曲は、紅白にもレコ大にも全く選ばれていない(選べない、というべきか)。トップ20まで広げても、SMAP と TOKIO と倖田來未がやっと入ってくるだけだ。

 だから「紅白歌合戦」と「レコード大賞」を今年の「ヒット曲」の「総まとめ」ととらえると、とんでもなく、はずれてしまっていることになる。ここには、各事務所の思惑と、アーティストのポリシーと、選定する側の事情など、様々なものがからんで、大ヒットした曲を歌うアーティストをテレビへ引っ張り出せなくなっている現状が現れている。s

 しかしもはや、「紅白歌合戦」と「レコード大賞」を「今年の『ヒット曲』の総まとめ」ととらえる必要はなくなって来ているのではないか。いや、とらえたくてもとらえられないだろう。

 だとしたら、これまで音楽業界/芸能界の一大イベントして権威を持って君臨してきた、このふたつのイベントの見方をもう変えてもいいのではないか。

 私としては、このふたつのイベントは、それぞれ独自の審査委員が集まって「好み」の曲を選んでいる、と考えて見るようにし始めて何年か経つ。

 確かに裏に音楽事務所の「暗闘」もあるかもしれない。ってか、ある。その背景にはテレビ局の無節操も、ある。特に「レコード大賞」はテレビにナマ出演しないアーティストに賞を与えなくなってからおかしくなり、視聴者が離れとうとう放送日も大みそかから12月30日になった。

 だが、もうそれは修正不可能なところまで来ている。様々な利害がからみあって、制作者・主催者のイメージ通りにイベントを作っていくことはもうできないのだから。

 さらに深く考えれば、これだけ多様化した社会にあって、もうある年の「ナンバーワン」や「ベストソング」を決めること自体が困難になっているのではないか。

 『オリコン』のランクだって、CD の売り上げというだけの指標だし、多種類販売はいっしょに集計しているし、ダウンロード販売はランクに入っていない。実際に今ヒットしている曲を決める方法に決定的なものはないし(たぶんこれからもありえないし)、どんどん「たくさんある内のひとつ」の指標になりつつあるのだ。 だから、私としては、「紅白歌合戦」は、小林幸子と美川憲一の「コスチューム」バトルを楽しみ、1年間でこの時しか聴かない「演歌」を味わう場所でいいし、それ
以上でもそれ以下でもない。

 「レコード大賞」も、実力がある w-inds. が評価される数少ない場として、そのパフォーマンスに酔えばいい。このところの「レコード大賞」は開き直った感じで、センスある人選をしていることもある。 大事なのはこのことが、こうした年末の特別なイベントだけではなく、毎週テレビ局が放送している音楽番組にも同じくあてはまる、ということだ。

 「HEY! HEY! HEY!」も「うたばん」も、そして「ミュージックステーション」さえも、決して正確にいまの音楽シーンを反映してはいない、と思って観なければいけないのだ。

 テレビの音楽番組に出なくても、すばらしい能力を発揮しつつ活動しているアーティストはたくさんいる。みんなが、テレビに出ている=売れている=才能がある、という怪しげな「公式」を信じてしまっているからこそ(もちろんそういう側面もあることはある、しかし全てではない)、すばらしいアーティストに触れるチャンスをみすみす見逃すことだってあるのだ。 自分の好きなアーティストは、自分の力で、情報の山の中から見つけた方が面白い時代なのだ。山本リンダの「どうにもとまらない」風に言えば、「うわさを信じちゃいけないよ」であり、「テレビを信じちゃいけないよ」「ネットを信じちゃいけないよ」ということだ。

 これは決して空しいことではない。自分の目で、自分のセンスで、自分と波長があった音楽を探していこうよ、と言いたい。

 

  《 06年11月16日音楽業界 07年1月3日音楽業界》