▼NEWS が戻ってきた、でも納得がいかない
[2007年01月03日(水) ]

 

 NEWS が12月31日の「ジャニーズカウントダウン2006-2007」(東京ドーム)から6人で活動を再開した(もともとのメンバーは8人)。

 これまで謹慎していた内博貴と草野博紀(この記事からあえて名前を記します)は、「研修生」として再スタートを切ることになった。ふたりの今後については「関係各位と協議をさせて頂いた上で決定」される(以上、ジャニーズ事務所公式サイトjohnnys net より)。

 私は、2005年に「事件」が起きて以来、一貫して同じ意見を何度もブログにかいている。今回の結果には正直、落胆せざるを得ない。johnnys net に載った12月30日付「『NEWS』活動再開のお知らせ」によれば、ふたりが「ファンのみなさまや関係各位に多大なるご迷惑をお掛けしたことについて十分に反省していると認められたため」研修生に留め置く、というもので、全てふたりの「自己責任」だととれる内容だ。

 すでに様々な意見がネットをにぎわしているが、ジャニーズ事務所自体の責任を問う声は少ない。また、事件自体がすでに過去のものになっているのか、内博貴に酒を飲ませた、とされているフジテレビの菊間千乃アナウンサーは、とっくの昔に復帰して仕事をこなしていることと比較しての「罰」の重さも指摘されていない。

 「未成年飲酒禁止法」をご存知だろうか。1922(大正 11)年3月に制定されたもので、未成年=20歳未満の飲酒を禁止しているものの、飲んだ本人に対する罰則規定はなく、ただ酒を没収されるだけだ。罰せられるのは酒を提供した側である。この「提供した側」もあいまいなので、この法律が厳密に適用されたケースはまれで、「補導」の一部として指導されるだけのことが多い。

 内博貴の場合もそうなので、飲ませた側が簡単に許されていて、内博貴がこれだけ重い責任を負わされるのは納得がいかない。 ちなみに、「未成年飲酒禁止法」は、子どもの健康のために立法されたのではなく、当時軍隊へ入隊してくる若者が酒やタバコにおぼれていることが多く、軍隊の質が下がるのをおそれ、軍部が当時の帝国議会に働きかけて作らせた、という経緯がある。これに先立つ1900年に作られた「未成年喫煙禁止法」も同様だ。

 こうした作られ方から、また世界的に見て20歳は遅い方なので(ほとんどの国が18歳から OK。16歳からの国もある)、法律自体を新しく変える必要性が何度も論議され、修正はされているものの、この規制の仕方自体を検討する必要が大いに残されている

。 以上のようなことを考え合わせても、もう少し寛大な措置がとられてもいいはずだ。それに、「実態」として社会的には、18歳になれば許容しているケースが圧倒的だし、「たまたま」見つからなかっただけで、10代タレントが酒を飲む機会はむしろ芸能界の方が多いくらいだろう。

 だが、この部分は「まじめ」な方たち、「タテマエ」を重んずる方たちには、たいてい承服しがたいことになっている。しかし、本気で10代の身体のことを考えるのならば、10代がどう酒やタバコに触れないようにするか、対策をもっと講じるべきだし、「大人の都合」で許されたり厳しく罰せられたりと、矛盾した対応をされているのが現状であることをどう考えるのだろうか。

 私は、厳罰化よりも、特に酒に関しては、その害とメリットや楽しく飲める方法をきちんと10代に「伝える」べきだと思う。地域での付き合いや世代を越えた付き合いが極端に減っている中で、酒の飲み方を教えてくれる先輩などいなくなってしまっているのだから。

 だから私は、ジャニーズ事務所の「教育責任」というのが、どうして問われないのかが不思議でならない。芸能界/音楽業界という一般とだいぶ「作法」の異なる世界に身を置いていると、10代に何かを伝えてあげようという人と時間はもっと少なくなる。

 そして日々競争していなければならないのだから、ストレスもたまる。しかし相談でき支え合える人間関係を作り上げたりする時間も余裕もない場合が多い。タレントやアーティストを目指したが、医者やカウンセラーに心のケアを受けなければ生活していけなくなるくらいにボロボロになってしまった10代を私は何人も見て来た。そうなると事務所から冷たく簡単に放り出されてしまうこともかなりある。

 たくさんの10代を預かって、タレント・アーティストを育てる、ということは、決してたとだ歌やダンスやトークを磨くことだけではないはずだ。この社会で生きていくために基本的に必要なことも身に付けさせる責任があるのではないか。

 芸能界/音楽業界では、計り知れないことが起きる。人気者として襟を正さねばならない、という「タテマエ」もわからなくはないが、年齢に関係なく酒でも飲まないとやっていられない「どうしようもない力」が働く業界であることもまたよくわかる。

 例えば事務所間のバーターだけのために、実力があるのに仕事を奪われるとか、デリケートな人間には耐えられないような「見下された」対応を受けるとか、一般人だったら絶対にやりたくないようなことをやらされる(しないと仕事をもらえない)とか。具体的に書けないが「事実」である。 まとめると、今回の事務所の措置は、単純にフジテレビの菊間アナに比べて重すぎる、ということ、そして事務所の「教育責任」がいっさい問われないこと、この2点がどうしても納得できない。

 NEWS、そして関ジャニ∞のファンたちも本当にしんどいと思うが、それでもしっかりと内博貴と草野博紀が復帰する日を待ち続けている。胸が熱くなる。事務所がそんな想いに応え切っているとは思えない。

 

  《 06年12月5日音楽業界 07年1月4日音楽業界》