確かに、ベストアルバムだよね。発売したシングルをまとめてベスト・アルバムを出す場合で、次のベストまでたった5ヶ月半というのは記録ではないだろうか。記録が作れるのも当然で12週連続でシングルをリリースしたのだから。
2005年9月21日発売の倖田來未「BEST〜first
things〜」が150万枚を超えてまだ売れているさなか、次のアルバム「BEST〜second session〜」が3月8日に店頭に並ぶことになった。
内容は余りに「ひねり」がなく、驚きを通り越して声も出ない。CD+2DVD=3枚組(5040円/枚数限定生産)、CD+DVD=2枚組(3990円)、CD(2940円)の3種類が発売される。
CD
は12月7日発売の「you」から2月22日発売の「Someday」までのシングル12曲と未定のオマケ曲合わせて13曲入り。
DVD
は12週連続リリースしたシングルの PV をまるごと1枚に。限定盤につく DVDは「LIVE TOUR 2005〜first
things〜」の本編を全曲収録したもの(21曲!)。これで限定盤がほしくならないわけがない……。
さらに初回盤には「ボーナストラック」「豪華撮りおろしブックレット」「期間限定サイトのアクセス権」(アルバムリリースパーティーの応募や特典映像視聴)などの特典が付く。
でも、これでいいのか。
3990 円(最初のベスト)+3150円(同日発売の
DVD)+1050円×3+500円×9+5040円(今回のベスト)=19830円。約半年で倖田來未のファンが全アイテムを限定盤中心に揃えようとするとこれだけの費用がかかる。限定シングルを買いそこなってオークションなどを使うともっと費用はかさむ。
ファンならこれに耐えて応援するべきで、ファンなら限定シングルを買えなかったのは「自己責任」だというコアなファンもいる。しかしポイントは、これでファンが増えるだろうか、ということである。
これだけ話題を作れば一時的にファンは増えるかもしれない。とはいえ「レコード大賞」&「紅白歌合戦」であれだけ目立ったのにチャート的効果は予想ほど大きくなかった。コアなファンは本当にえらくて、しっかり発売されるものを買い続けてくれている。
本当に倖田來未をスーパースターにしようと思うのなら、ファンが「買い疲れ」するような発売日程は避けるのが「王道」だ。一時的に関心を持っても、アイテムを買いきれないことがアーティストから離れるきっかけになってしまう。それは次第にコアなファンにも及ぶ。
まさかとは思うが、A社は倖田來未をさらに「大化け」させる気がないのではないか。じっくりファンを増やそうとするのでなく、今のファンをひとつのピークと考えて、そこから金を絞り取れるだけ絞り取る、そう思われても仕方のない「戦略」だ。
倖田來未自身はどう思っているのだろう。もしファンに対してこれだけの商品を買うのが義務だと思っているとしたらこわい。自分の表現したものを、できるだけ手に入れやすく提供して、できるだけ多くの人に聴いてみてもらいたいと思うのがアーティストなはずだ。
くり返す。12枚シングルを出すのには、一般的には3〜4年かかる。ベストアルバムを半年間に2枚も出せるなんておかしい。小遣いを貯めて少しずつ買い揃えて行こうとする10代にはきついペースだ。この道は、ファンの立場に立ちファンを増やして行こうという道でもなければ、倖田本人の意思にかかわらず倖田來未が記憶に残るすばらしいアーティストになる道でもない。