▼ポップスター・大野靖之誕生!
[河口恭吾・金田賢一がゲストの青山劇場ライブ]
[2007年03月28日(水) ]

 

 どんな気分の時に来ても、大野靖之さんのライブは、いつのまにかその歌声で私をしっかりとくるんでくれる。

 それも、ただ外敵から護ってかくまってくれるのではない。ライブという空間に身をゆったりと委ねているうちに、心が落ち着き、明日からまた、彼とともに夢に向かって歩いていこうと、心が私を突き動かし、ライブ会場を出る頃には、素の「自分」がそこにいる。かたくなにこだわっていた些細なことを大きな視野で見られるようになり、日常のしんどいことに向き合っても少し余裕が生まれるようになる。

 安全で穏やかな空間で「自分」を見つめなおせる、ということだ。つまり、ただ優しく温かいだけでなく、生きていく力を分かち合える水槽なのだ。

 3月28日。2時間17曲。拍手が終わって、次の曲が始まると、ふっと会場の「気」が大野さんに集中する。その瞬間が好きだ。張りつめた緊張、というのではなく、その場にいるいろいろ違った人が、大野さんの歌を通じて、1ミリでもつながり合える可能性に賭ける緊張だ。

 初めての青山劇場ライブ[東京都渋谷区]。小さい頃、ミュージカル「アニー」をここに見に来た大野さん。「その時この舞台に立つと」まで言って、一瞬間を置くと、「思ってました!」。会場がドッと湧いて拍手。緊張は隠せなくて当たり前。でもMC も本当に堂々としてきた。

 すごくふっ切れた感じに見えた。それは1曲目「心のノート」から、笑顔をいっぱい見せてくれたからだ。たくさんの人の前で自己表現する歓びが、大野さんの声や演奏だけでなく、身体全体からガンガン伝わってくる。まさに音楽を楽しんでいる大野さんを見ていて、私たちもとっても楽しくなる。まさに「Feel the Wind〜新たなる出会い」(ライブタイトル)。

 バックミュージシャン7人(ギター・ベース・バイオリン・キーボード・ドラムス・コーラス2人)とともに、大野さんの曲たちは、格調の高さを見せる。でも決して気取ったりはしていない。

 「(歌の)賞味期限がまもなく切れる」宣言(2006年8月・青山円形劇場ライブで)を撤回して歌った「二十二歳のひとり言」は何度聴いてもこみあげるものがある。泣く人もかなりいた。そして今回もっともすごい、完成度が高い、と思った曲は「日溜り」だった。静から動へ、詩を読むように始まって、終盤の激しいギターワークで魅了する。見事だった。圧巻だった。

 私の大好きな「ともだち」では曲間でメンバー紹介がされ、メンバーの一部にはサビを歌ってもらい、そして会場全体へふる。この曲間メンバー紹介というのはライブのだいご味で決まると実にカッコいい。私も思わず大きな声で歌った。

 今回のライブでは新しいことにもチャレンジした。カバーを2曲。尾崎豊以外をライブでやるのは初めてだ。ビートルズの「In My Life」とスピッツの「チェリー」。オリジナルをいっぱい聴きたいなんて気持ちがチラリと頭をかすめたが、大野さんの声の魅力を堪能するためには大歓迎。今までと違う面が見られて、新鮮でかつうれしかった。

 そしてそこからがサプライズ。ピアノに戻って引き出したメロディから次はジョン・レノンの「イマジン」かと思いきや、俳優の金田賢一さん(「太陽にほえろ!」デューク刑事役などで有名/大野さんと同じ事務所)が上手から登場。訳詩を朗読した。

 さらに! その後いきなり大野さんが「今日のサプライゲスト!」と叫ぶ。金田賢一さんかと思ったらもうひとりいるらしい。「河口恭吾さん!」。下手から川口さん登場で、会場はマジでびっくり。

 河口さんが「桜」を熱唱した後(大野さんはピアノ)、金田さんも交えて3人でトーク。朗読をしている金田さんとは一度共演したかったのだと大野さんが説明。そして、河口さんの「地球兄弟プロジェクト」に大野さんが参加したことがわかる。

 「地球兄弟プロジェクト」は河口さんのアルバムに入っている平和へのメッセージソング「地球兄弟」を歌ってくれるアーティストを募集して、広く想いを伝えていこうというもの[2006年10月発売「普通に生きてゆく事は意外と難しい」に収録]。

 トーク後、大野さんはその「地球兄弟」を気合いを込めて歌う。サビでは河口さんも参加。迫力のあるコラボレーションに会場は興奮。すごかった〜。

 今回のライブは本当によく構成されていた。CD シングル曲「心のノート」で始まり、ラスト=アンコールはそのカップリング「あいしてる」。前半はラブソング中心に盛り上げ、続いて学校ライブで生まれ育った曲を披露。メッセージ性が濃くなっていくところで、河口さん登場。そして「日溜り」「二十二歳のひとり言」「仲間讃歌」という名曲を並べてしめる。「二十二歳のひとり言」で感動は最高潮に達し、それを
フォローするように「仲間讃歌」で気分を変えて希望あふれるアンコールへとつながる。大満足の選曲だった。

 大野さんのこれまでをたどり、それをぶつけるような流れに心騒いだ。うしろのスクリーンには、学校ライブのスナップや、初めて大野さんの家族やお母さんの写真が映し出された。このライブは、またひとつの区切りになる、と強く感じた。

 大野さんは「愛のリレー」「やさしさのリレー」を訴える。ある人に愛ややさしさがある接し方をすれば、その人がまた別の人に愛ややさしさがある接し方をする。それが巡り巡って、自分に返ってくる。だから直接の見返りがなくても、愛を、やさしさをまず身近な人に、と言う。

 このライブの「気」は、きっとそんなリレーを作り出すきっかけになるだろう。この話は……そう、やっぱり書いてしまおう……ENDLICHERI ☆ ENDLICHERI のケリーさんも大野さんに近い「愛の循環」をライブで語っている。そんなアーティストたちを愛せることがまたうれしい。

 ジーンズに白く軽めのブレザー。シンガーソングライターとしてドーンと構えている。緊張もパフォーマンスにできるようになり、余裕が感じられる立ち居振る舞い。スタートしてのオーラも一段と強くなった。

 ポップスター、大野靖之の誕生、そして、新たな旅立ちの始まりである。私たちもいっしょに旅立とう、心からそう思った。★感動が大きかったので、当日記事にするという無謀なことをやってしまいました。

あ、今日があと15分! アップ予定の記事を明日に回したくなるほど、すぐにこの感動を伝えたかったんです。だからこの後多少修正するかもしれません(それは明示します)。いよいよファンクラブもできる大野靖之ワールドをあなたも体験して下さい!

★大野さんのブログでも青山劇場ライブの報告がアップされています。[こちら]からご覧ください。

 

  《 07年3月5日大野靖之