テレビの可能性せばめる、ワイドショーだけのテレビ
[THE BIG ISSUE 2009年8月15日 125号]

 

 最近の新聞のテレビ欄を見ていると、NHKを除いて「枠」の数が少ない、つまり一つの番組枠が大きくなっていることに気づく。これは、朝から夕方までにワイドショーが増えているからで、民放各局とも午前5時から午後7時までの14時間で、いちばん少ないテレビ東京系で7時間、最大のTBS系で11時間も占めている。

 ザッピングをして観ていると、各局の個性はほとんど感じられない。「わーっ!」「すごいですねえ」「うまいっ」……ほとんど同じようなテンションの高い言葉が飛び交い、お笑いを多く含むゲストがのりまくってコメントしている。ニュース解説、料理、商品販売、有名スポット訪問、ゲストのトークなどなどコーナーも大同小異だ。

 この傾向は今年の4月以降加速していて、経済不況で、スポンサーが降りたり金を出し惜しんだりしている中、お手軽にスタジオだけでつくれて、ゲストをギャラの安いタレント中心にするなど経費節減もしやすいから、ワイドショーがもてはやされて
いるのだ。

 しかし、残念ながら結果は出ていない。伝統の昼ドラマを終わらせてワイドショーを拡大したTBS系は視聴率の大幅な低下に悩んでいる。

 当然である。内容を手抜きしていれば、視聴者だって飽きてくる。特にいつも思うのは、番組内で新聞を張り出し(スポーツ紙や夕刊紙が多い)、その中からおもしろそうな記事をピックアップして、ご丁寧に記事に赤線まで引いて、それをほとんど読むだけ(資料映像をたまに足す)のコーナーだ(ほとんどの局でやっている)。取材は新聞社に任せ、その成果だけなぞる、というのはメディアの仁義にも反するのではないだろうか。また真偽のほどを追加取材して、検証したり新しい情報を加えたりするのがメディアにかかわるもののプライドではないのだろうか。興味深いところだけつまめて便利だと感じている視聴者もいるかもしれないが、結局同じような情報ばかり流していては、最終的にメディア離れを加速することになりかねない。

 番組の異様なハイテンションも気になる。私の母は介護施設にいるが、かなりの時間テレビを見て過ごしている。ひとり暮らしの老人も一日テレビを楽しんでいる人が多いと聞く。歓喜や絶叫や大げさな反応などなくても、もっと落ち着いて番組を進行させられるはずだ。その方が年老いた人にも優しく、結果的に情報がよりまっとうに伝達されるようになるのではないか。はしゃぎすぎるスタジオが、すべての事件を「イベント」にしてしまい、過剰反応や世論の操作を生むのだから。

 ワイドショーだけになったテレビは、テレビの可能性を自ら狭めている気がしてならない。

 

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