錦の御旗、経費節減でテレビ番組も「格差社会」化
[THE BIG ISSUE 2009年2月1日 112号]

 

 「昼ドラ」の元祖とも言うべき、TBS系「愛の劇場」がこの3月で打ちきりになると言う。午後1時から30分間、さまざまな「愛」のかたちを大胆に取り上げて来て「天までとどけ」「大好き!五つ子」「温泉へ行こう!」などの記憶に残る作品を残し、根強いファンがおり、いま40周年記念番組「ラブレター」が放送中だというのに、である。

 この原稿を書いている昨年末(不思議な表現……)の時点ではまだ確定していないが、新聞・雑誌・インターネットによれば、TBSはさらに、1時30分からのドラマも終わらせ、午後1時から4時間続きの報道ワイド番組を始めるという。宣伝のために、わざと情報を正式発表前にリークして盛り上げる、というのはこの業界の定番だから、
たぶんその通りの改編になるのだろう。

 このところ、どのテレビ局でも番組の大型改編が噂されている。それも、どんな人気番組あるいは長寿番組も、番組「リストラ」の対象外にはならない。超有名タレントの名前を冠していても、それだけでは存続できない状態になっている。存続できても、司会者を有名タレントから新人あるいは局アナに変えるなど、今までにない大きな変化が起きつつある。「ギャラを下げてもいいから番組をおろさないでくれ」と発言したタレントもいる。

 理由は明らかだ。経済が悪化してきて、スポンサーが金を出し渋ってきている中で、視聴率がますますものを言うようになり、制作経費をいかに切り詰めるかがかつてないほど優先順位のトップに位置するようになったからだ。制作費のかさむドラマ(特に昼ドラは時間帯上、どうしても高視聴率は望めない)や、ギャラの高いタレントは極力敬遠しようということになる。実際、ワイドショー系の番組は、スタジオを使いナマで収録するから、セットもけっこう長く使えるし、取材も下請会社を酷使しつつ財政状況に応じて手抜き可能だし、経費がかさんできたらゲストや司会を簡単に取り換えて調整できるから、実に便利な番組形態だ。

 しかし一方で、スポンサーが資金を出している番組では、ささいなことでも海外へ取材に行き、どうでもいい罰ゲームのために金をかけたセットを作ったりしているバラエティ番組もある。この番組間「格差」を解消しようという改編でないことは確実だ。

 テレビ局とスポンサー企業はいよいよ、どんな放送を送り出すのがいいのか、という優先順位が分からなくなってきたように見える。経費節減のためだけで良質の番組が次々となくなっていく不幸の連鎖が始まっている。

 

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