出演者は素材? 長すぎるテレビ番組収録時間
[THE BIG ISSUE 2008年12月15日号]

 

 先日NHKテレビのスタジオトーク番組に友人が出演した。2時間の番組の収録に、夕方から深夜まで6時間半もかけたという。

 いうまでもなく、番組の編集作業は大変な作業になる。ビデオを何回も見て「伝えたい部分」を抜き出し、「流れ」ができるように並べ替え(発言の順序を変えることも多い)、さらに視聴者にわかりやすい全体構成に仕上げる。

 この「編集」によって作られた番組は、やはり「現場」で実際に行われたトークとは異なるもので、トークを「素材」として、制作者たちが「伝えたいこと」を伝わりやすくするために再構成した「作品」である。「やらせ」というより、そう思って見ることがリテラシーになる。

 したがって、トークに参加したメンバーからはしばしば不満が生じる。自分のあの発言をなぜカットしたのか、白熱した議論の雰囲気が伝わっていない、あれだけしゃべってたったひと言しか使われていない……。

 私の友人の場合、そうした想いがなくはないが、ディレクターたちの「伝えたいこと」が、明確で妥当なポリシーに貫かれていたので、番組の出来にはいい点をつけてあげたい、と言う。「編集」する側のポリシーはきわめて大事で、そこがいいかげんだと、出演者からのブーイングだけでなく、視聴者からも欲求不満が生じる。さらにそこに政治的意図が「圧力」というかたちで入ることも怖い。

 しかし、実態としてはNHKは実は恵まれている方で、出演者を長時間拘束し、編集にも時間をかけられるのは、それだけ資金と人材と施設の面で余裕がありスポンサーがいないからだ(上部の圧力はある)。民放では番組収録に2倍の時間もかけられないし、編集も急がねばならないからどうしても丁寧さに欠けてしまう。制作会社が下請していたらなおさら余裕がなくなる。

 私が最も気になるのは収録時間である。メディアの人間は、少しでも多くトークを集め、できるだけたくさんの人間に取材をし、たっぷり素材を集めておいてそこから自由に選んで表現したがる。カットされて「あれだけ話したのに」と落胆する、話す側の思いを想像できる人は少ない。話す側だって多大な時間とエネルギーを使うのに。

 ポリシーがしっかりしていれば、トークも取材先ももっとしぼれるはずで、番組の3倍も収録にかけるのは長すぎる。「編集」にごう慢さが入り込まないようにするためにも、より「伝わる」番組を作るためにも、素材は多ければ多いほどいいという神話を捨てる時だ。

 

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