ゲストの顔ばかり映そうとするテレビ
[THE BIG ISSUE 2008年11月15日号]

 

 最近のテレビ番組は、とにかくゲストが多い。ワイドショーやバラエティ番組を筆頭に、ニュースショーやドキュメンタリーや教養ものでも、タレントがスタジオにいて、あれこれコメントをする。その分、タレント化していない「専門家」「評論家」の出番が減っている。

 数が多いから、1つの番組中でも、話す機会は限られてしまう。録画だと、ゲスト1人につきひと言程度に編集されてしまうこともある。しかし、ゲストは画面によく映る。直接ゲストと関係ないシーンでも、カメラが切り替わり、ゲストの様子を見せる。これは明らかに、ゲスト目当てでその番組を見る人がいる、という想定があった上で
のカメラワークだ。視聴率を意識しているといってもいい。

 サービスはどんどんエスカレートするから、番組中、取材済みのビデオを流す時でも、ゲストの存在を示すために、画面に小さな四角い枠を作って、ゲストの面々の反応を追いかける。こうなると、ゲストに関心のない視聴者にとっては、ビデオに集中できなくなるし、それでもつい枠内を見てしまうし、画面の大事な一部が欠けてしまうこともあるし、内容をじっくり観るのに大きな妨げになる。

 ビデオを観ている時の表情を撮られるのは、ゲスト側にとってもストレスを強いる。それは、ビデオに熱中していると突然自分の顔が映り、びっくりしているゲストが時々いることからも想像できる。私も、テレビに出たことがある人間として、ビデオを観ている時も映されている、と意識することで、不必要な緊張を感じたことを覚えている。以上は民放にもNHKにも共通の傾向だ。

 そうまでしてタレントを番組に出し、「お祭り」化することは一時的に視聴率に寄与するかもしれないけれど、視聴者にも制作関係者にも、最終的なメリットをもたらすかどうかは疑問だ。おおぜいのゲスト=わずかのコメント、という構図は、そこで話されているテーマが深まらない上に、そのタレントについてもどんな人間かが見えてこないということになるからだ。

 そもそもスタジオにたくさん人を置いて「解説」しなければいけないものなのだろうか。その時間をカットして、きっちりしたビデオを作り、司会者がそっと視聴者に提示して考えてもらうような味のある番組があってもいい。私たちもゲストの表情だけ楽しむのではなく、ゲストを見せるのなら、人となりまでじっくり見せてほしい、とテレビに求めるものを転換する必要がある。

 

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