「いいこと」「感動」の押しつけ?「24時間テレビ」
 [THE BIG ISSUE 2008年10月15日号]

 

 「24時間テレビ 愛は地球を救う」(日本テレビ系・8月30日〜31日)が今年も全平均で19%と高い視聴率を上げた(31日夜だけで30%)。これは、深夜でもかなり多くの人がこの番組を見ていたことになる。113キロマラソンを完走したエド・はるみのゴール直後は41%にも達した。

 昨年はこのマラソンがタレントの酷使にしかならないのではないか、と書き、それは今年も変わらないけれど、この番組が本当に「地球を救っているのか」という疑問はさらに増した。

 マラソンだけではなく、番組内でタレントやアスリートたちが、巨大な絵を共同制作したり、津軽海峡縦断遠泳リレーをしたりする。また、「ごくせん」の熱血教師ヤンクミ(仲間由紀恵)と特別支援学級の生徒との交流など、タレントと障がい者・難病にかかっている人たちとが「感動のドラマ」を次々と紡いでいく。

 それはそれで、視聴者に「問題」の所在を知らせ、共同作業の大事さを感じさせることだろう。しかし、テレビはすでに「じっくり」見て考えるメディアではなくなっている。この「24時間テレビ」にしても、全部を休みなく見続けることは想像できないわけで、テレビをつけておいて、時々魅かれたところだけ注視することになる。

 しかも、そこから「感動」を少しでもおすそ分けしてもらえれば、それだけで何かいいことをしたと錯覚できる。だからこそ制作側も「感動」をこれでもかとあらゆるコーナーに配置する。これでは、この日だけイベントとしてチャリティに参加することで満足してしまうことにならないだろうか。

 何しろ番組内では、取り上げた問題は、背景にある日本や世界の政治・経済・社会状況からほとんど切り離され、それぞれの自助努力の方にスポットが当てられているように思うからだ。なぜチャリティが必要なのか? という問いかけは誰もしていない。「いいこと」だからやる、だけではかえって本質は隠されてしまう。その証拠に、この雑誌で特集され、雨宮処凛さんが一貫して訴えている「貧困」の問題は無視されている。「24時間テレビ」の制作下請会社でどんなに社員(特にAD)やバイトがひどい労働を強いられているかは誰にも見えない。

 「24時間テレビ」第1回(1978年)の中で総合司会のひとり大橋巨泉が叫んだ「しかしテレビの前の政治家のみなさん、これは本来あなたたちがやらなければいけなかったのですよ!」というメッセージはどこへ消えてしまったのだろう。

 

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