倖田來未が、ニッポン放送系の深夜放送『オールナイトニッポン』特番(1月30日)で、マネージャーが結婚したことにふれて「やっぱ、35(歳)まわるとお母さんの羊水が腐ってくるんですね。できれば(マネージャーには)35歳ぐらいまでに子どもをつくってほしいな」と発言した。
これはただならぬ波紋を呼び、ワイドショーの格好のネタになったのはもちろん、活動の自粛、CMの中止、出演番組の放送延期、そしてテレビでの謝罪(2月7日フジテレビ系『スーパーニュース』)にまで至った。ニッポン放送の担当ディレクターまで処分された。
確かに認識不足による不適切な発言であったことは事実だが、そのバッシングのされ方にひどくアンバランスなものを感じる。叩きやすい歌手・タレントだったから、とことんメディアも集中攻撃したのではないか。
ちょうど1年前の1月27日、柳沢伯夫厚生労働大臣(当時)は自民党県議の後援会で「女性は生む機械」と発言した。しかしメディアは倖田來未ほど彼をたたかなかった。古くは石原慎太郎東京都知事の、他者の発言を引用した「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものは、ババァ」に対しても、メディアから、知事の活動自粛や大掛かりな謝罪要求が求められることはなかった。都知事に関しては他にもフランス人への中傷など、失言・暴言がありすぎるのに、悠然としていられるのはどういうことなのだろうか。
最近では1月25日にも経産省の北畑隆生事務次官が講演会で、デイトレーダーは「バカで浮気で無責任」と放言した。しかしメディアの反応は、倖田來未に比べてにぶい。知名度で言えば圧倒的に倖田來未が上かもしれないけれど、この国を担う大きな責任と権力を持つ官僚の発言の方が圧倒的に重い。
各テレビ局は、倖田來未の謝罪をフジテレビ系が独占放送したことに怒っているという。そこに現れているのは視聴率を取りたいというむき出しの欲望だけだ。倖田來未を「徹底追及」する方が「面白い」というだけだ。報道する者としての論理と倫理は全く忘れられている。倖田來未の謝罪より追及すべきことはたくさんあるのではないか。
きちんと反省を表明している倖田來未には追い討ちをかけ、力の強い政治家たちには「流れの中で言った」とか「誤解だ」といった反論に時間を割いてあげる。メディアとりわけテレビの報道は、あんまりなアンバランスだ。
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