「亀田家、絶体絶命!!」「ボクシング界はダウン寸前だ」……。10月11日を境に、新聞・テレビ等のメディアの見出しはがらりと変わった。同日のWBC世界フライ級タイトルマッチで、「亀田3兄弟」の二男で挑戦者の大毅が、王者・内藤大助に反則をくり返した上に、大差で判定負けし、JBC(日本ボクシングコミッション)が処分したからだ。
それまでは、格好の受ける「ネタ」として「大毅の切腹宣言に内藤乗り気」「亀田『総口撃』に内藤タジタジ」など、ほとんどのメディアが亀田家のパフォーマンスを面白おかしく扱っていた。ここまである日を境に報道のトーンが変わった例も珍しいのではないか。
スポーツ評論家やボクシング関係者、そして亀田びいきだった有名人まで、亀田家の批判を突如として始める。変わり身の早さとそれを当たり前のように容認する読者・視聴者にもびっくりする。それまで、亀田大毅は才能をもっと活かせるようトレーニングをし直すべきだなど、まともな批判をしていた具志堅用高氏の意見などほとんど取り上げてこなかったのに。
とりわけあきれてものが言えないのはTBSだ。早くも2001年から亀田家を囲い込み、ほとんど亀田家のいいなりにパフォーマンスを紹介し、特集やドキュメンタリーを組み、11日の試合でも反則を指摘するどころか、露骨に亀田大毅をかばうアナウンスと解説。
これまでも疑惑の判定や、対戦相手へのマナーにかけた対応があっても何のその、昨年以来40%近くの視聴率を稼げるようになった試合中継の前には何も対抗できるものはない。すべてが亀田家ペースとなり、TBSのあるバラエティ番組で亀田家をおちょくるギャグが放送されただけで、父親亀田史郎氏がどなり込んできて謝罪させたほどだ。
何のことはないこれは、どう見てもマッチ・ポンプではないか。過激な発言を何度もテレビで流し、バラエティ番組にも出し、試合前には歌を歌うなど長い「ショウ」を見せる……反発も人気のうちとすれば視聴者が湧かないわけはない。ところが今度は、TBS内の番組でも亀田家批判が飛び出してくるようになった。利権もからんでいるはずだから、簡単に亀田バッシングに移行するとも思えないが、亀田家を見捨てて次の「商売道具」探しを狙っている関係者はいるはずだ。
うんと持ち上げておいて、ドーンと落とすマスコミ、とりわけテレビのこわさ。亀田3兄弟の人間的成長のチャンスまで奪ったことになる。私たちは、もっと強い気持ちでこうしたテレビの人間を材料としか見ない扱いにもっと敏感にならねばならない。ちなみに、放送倫理・番組向上機構の青少年委員会が10月25日、テレビのバラエティー番組で行われている「罰ゲーム」などの暴力表現について「青少年の人間観、価値観を形成する上で看過できない」として、テレビ各局に自粛を求める見解を発表したが、本当に遅い。
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