窓辺 最終回「ひょうたん島にもらう希望」
[静岡新聞 2007年9月26日 夕刊1面]

 

 テレビ人形劇『ひょっこりひょうたん島』の最終回をご存知でしょうか? ひょうたん島に国連加盟の話が持ち込まれます。ただし国際警察から指名手配されているダンディを引き渡す、という条件が付いていたのです。島民たちは悩みます。ダンディが決して根は悪人ではなく、やむにやまれぬ事情で指名手配されていることを知っていたからです。トラヒゲはダンディを引き渡して懸賞金をもらおうとし、ダンディは自首しようとし、子どもたちは必死にかばう……。

 最後にまとめたのは大統領ガバチョでした。どこかの国の首相のように投げ出したりも、ごり押ししたりもせずに、国民投票で決めることにみんなを持っていきます。ふだんはトラヒゲの贈賄を受けたり、調子に乗って演説ばかりしていたりで、パフォーマンス好きの大統領でも、いざという時には「何の心配もいりませんぞ」と国民一人ひとりを大事にするために力を発揮したのです。個性豊かな島民が「共に生きる」島のリーダーとしては最高でした。

 国民投票の結果は、ダンディ以外は国際警察への引き渡しに反対。最後までごねたトラヒゲにはみんなが説得しきります。こうしてひょうたん島は国連にも加盟せず、漂流を続けることになって5年間の放送が終わりました。1969年のことでした。

 そして今、それから40年近くが経っても、この国は優しい国になっていません。私も微力ながらそれに抗していきたいと決意しています。ガバチョの言葉でこの連載を終わりたいと思います。

 「みなさーーーん、わたくしどもはこれまでと変わらず、このまま波まかせ風まかせ、この広い大海原を自由に……流れていきますぞ」。まるい地球の水平線になにかがきっと待っていることを信じて。