今年4月に発売されたオムニバスアルバム「R■35」(35歳以上が懐かしく聴けるという意味)の売れ行きが好調だ。9月末でもまだ、各種チャートで10位以内をキープしている。「101回目のプロポーズ」「素顔のままで」「ひとつ屋根の下」など、1990年代のテレビドラマ主題歌の大ヒットばかり16曲を集めたのだから当然だ。
収録されている主題歌には、ドラマのワンシーンさえ思い出させる力があり、ドラマとともに強烈に視聴者の心に焼き付けられた曲ばかりだ。ほとんどの曲がミリオンセラー以上を記録しているのもうなずける。
とはいえ、このアルバムが売れている裏には、いまテレビドラマから大ヒット曲が出ていない、という現実がある。確かに2007年でも、「花より男子2」(TBS
系・「Love so sweet」嵐/「Flavor Of Life」宇多田ヒカル)や「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」(フジテレビ系・「蕾(つぼみ)」コブクロ)と、ドラマ主題歌がヒットチャート上位に並んではいる。だが、それぞれのアーティストのそれまでのシングル売り上げに比べて、2倍も行かない売り上げであり、ドラマの効果が爆発的であったとは言い難い。もちろんミリオンセラーには遠く届かない。
その第1の理由として、テレビ全体の多様化による、ドラマの視聴率の低下があげられるけれども、事態はもう少し複雑だ。主題歌・挿入歌のドラマ内での使い方にインパクトがないのである。心に焼き付くような場面に主題歌が使われなくなってきているのだ。下手をするとオープニングかエンディングの、タイトルあるいはスタッフロールのところだけにしか使われない。聴いてみようという人が減って当たり前だ。
1990年代にドラマの威力があまりにすさまじかったため、レコード会社・プロダクションはこぞって、テレビドラマの主題歌に自社のアーティストの曲を使ってもらおうとあの手この手を尽くすようになった。バーターでタレントを他の番組に出演させられるなど、テレビ局は蜜の味を覚えてしまったために、ドラマ内に楽曲を使う機会を増やし、さらにはドラマの内容とリンクしなくても無理やり使うようになった。きちんとドラマのコンセプトと主題歌をトータルに作り上げる姿勢が失われていった。
現在 NHK 「みんなのうた」から「おしりかじり虫」という曲がヒットしている(歌はこの曲用に作られたプロジェクト)。実はここ数年、この他にも宇多田ヒカル「ぼくはくま」や
TUBE の「みんなのうみ」など「みんなのうた」発のヒットが急増している。平井堅の「大きな古時計」といった大ヒットもある。
温故知新の選曲と現代を反映したオリジナルをうまく組み合わせ、異色のシンガーが歌う、という「みんなのうた」の戦略は面白いし成功している。ドラマの情けなさが際立つ現象だ。
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