窓辺 第10回「気になる過剰な決めつけ」
[静岡新聞 2007年9月5日 夕刊1面]

 

 誤解されている音楽のジャンルがあります。アニメ発の、ビジュアル系の、そしてアイドルのヒット曲たちです。それぞれ勝手なイメージを持たれ、音楽的にレベルが低いという「神話」は根強く、ここに分類されただけで試聴対象から直ちに外す人もいます。

 例えば、男性アイドルの曲がいいと男性が言うと白い目で見られます。しかし、関ジャニ∞、w-inds. など、クォリティが高いアーティストはたくさんおり、聴く前から排除するのはもったいないことです。

 その人の波長に合いさえすれば、どんな歌でも人を支えてくれます。私は40年にわたるヒット曲収集歴の中でも、とびっきり明るいアイドルたちの応援歌に何度も励まされ、自分の可能性を引き出してもらいました。DJ をやってジャンルによる偏見を打ち破るのは今も私の夢です。

 「分類」は物事を理解する手助けになるけれど、こだわり過ぎると、視野を狭くします。話は音楽にとどまりません。「○○人は▽▽だ」「女性(男性)は××だ」……こうした人間への決めつけが最近とみに目立ちます。過剰に一般化をしていることは、「日本人は勤勉だ」と言われても例外をすぐ挙げられることで明らかです。

 でも宇宙の果ての「イトウ星人は勤勉だ」と言われたら、何となく信じてしまいませんか? よく知られていない人たちに関しては、私たちは怪しげな情報でも納得してしまいがちです。その方が安心できるからです。そして「勤勉だ」が「気持ち悪い」や「邪魔者だ」に変わったら、根拠なく憎しみを持つかもしれません。いじめや差別や戦争はそうやって始まってきたのです。

 いちど「〜は○○だ」を禁句にして、自分の目・耳・身体……で確かめて音楽や人間を見直してみませんか?