テレビ番組を「資料」としてもっと活用するためにアーカイブスを
[THE BIG ISSUE 2007年7月1日&15日号]

 

 書店で手に入らない本でも、古書店(オンラインも含む)で探すことができるし、図書館で見つかって読める可能性は高い。しかしテレビ番組はどうだろうか? 

 ヒットしたドラマやドキュメンタリーはDVD化されるけれども、かなり値が張る。満足いくほどDVDを集めている図書館もまだ少ない。ビデオに録画して残すにしても、見終わってから撮っておけばよかったと思うことの方が多いだろう。ニュースやワイドショーやバラエティはほとんどが1回限りの放送だから、見直そうとしても、全くそのすべがない。

 だから「再放送」というのは視聴者にとって、非常に歓迎すべき放送になる。現在、東京を拠点とするテレビ局で見ると、昼間と深夜に再放送が置かれており、とりわけフジテレビとテレビ朝日は、平日の午後2時から5時をドラマの再放送に当てており、「再放送」が多い番組編成になっている。

 しかし最近、深夜枠は実験的な番組制作に当てられる傾向にあり、全体として「再放送」は各局1日最大4時間程度だから、ニーズに応えているとは思い難い。NHKは日曜夜に「NHKアーカイブス」を放送しているが、毎回過去の番組2本ではやはり物足りない。

 つまらない番組をお金をかけて作るよりは、「再放送」の方が楽で視聴率も稼げていいではないか、という声もあるが、ここに微妙な事情がある。「再放送」もけっこうお金がかかるのである。出演者や作家を含む制作スタッフに対して払うギャラがバカにならないのだ。実際、人気投票をするたびに必ずトップ争いをするNHKのテレビ人形劇『ひょっこりひょうたん島』のリメイク版を「再放送」できない理由のひとつが、制作にかかわっている人間が多くギャラがかさむからだという。さらに出演者・制作者の許可が得にくい場合もある。それでも「再放送」にもう少しお金とエネルギーをかけてもいいのではないか。

 現代ではテレビ番組が、時には資料的価値も持つ、保存に値する「著作物」であることは明らかだ。「再放送」に限界がある中、各局が制作した番組を「アーカイブス」(資料館)として保存し、有料でもいいから自由に閲覧できるよう最大限の努力をしてもおかしくはない。NHKもそのプロジェクトを行ってはいるが、もっと利用しやすくできるはずだし、資料整理の方法も不十分だ。

 映像は文字とは違った大きなインパクトを与える。学校の授業や研修に使って理解の助けにするツールにもなりうる。50年以上の日本のテレビ放送の歴史の中で、今改めて観ることに意義がある番組はたくさんあるはずだ。その財産を放置しておくのはもったいない。