窓辺 第3回「人形劇の魅力」
[静岡新聞 2007年7月18日 夕刊1面]

 

 若い女性タレントが、あるテレビ番組で『ひょっこりひょうたん島』が話題になった時、「そのアニメ知ってます」とあっけらかんと言ったので、ちょっとびっくりしました。たぶん彼女の分類には「人形劇」というくくりがなく、記憶が薄い中で思わず「アニメ」と表現してしまったのでしょう。

 それほどテレビから人形劇がほとんど消えてしまって久しくなります。しかし人形劇にはアニメとは違った味わいがあります。平面の中で2次元的な動きにしかならないアニメに対して、人形という「実体」があって、人間のように3次元的に動き回る。でも完全に人間にはなれない。と同時に人間ではありえないすばやい動きや変化を見せてくれる。人形は、人間をデフォルメ(誇張)して表現する物体なのです。

 例えば『ひょっこりひょうたん島』の登場人物、博士の顔はほとんど眼鏡で、目玉は磁石でその眼鏡上を動きます。ダンディの顔は3頭身と細長く、サングラスの下に目は作られていません。外形もユニークなものばかりで、シルエットだけで誰だかすぐわかります。

 人形の造形そのものにそれぞれのキャラクターが凝縮されていて、強く個性を主張していて、それがまた見事に人間のある一面を象徴しているのです。そんな人形がからみ合ったら面白くならないはずはありません。

 人形劇団ひとみ座に所属して、そんな『ひょうたん島』の人形をはじめ、たくさんの人形劇史に残る人形を作られた片岡昌(かたおか・あきら)さんの人形展が7月21日から8月31日まで沼津御用邸(西附属邸)で開かれます。22日には片岡氏と私のトークライブも開催されますので、来て人形劇の楽しさを改めて知っていただけば幸いです。