今、テレビから送り出される映像は、「リアル」ではない。バラエティはもちろん、ニュースでさえ大幅に加工されるので、私たちにさまざまな思い込みを植え付けることが多い。
私たちは、テレビの前で自分が見ているものがどんな処理をされているのかを想像する力を求められている。そのトレーニングに「公開録画」へ行ってみてはどうだろうか。
というのは「公開録画」を通じて、テレビ番組がつくられるプロセスをかいま見ることができるからだ。数十分の番組を作るのにどれだけたくさんの人と機器とエネルギーが使われるか、出演者が「素」とカメラの前とでどう変わるか、リハーサルがどれだけ綿密に行われるか(または行われないか)……その制作過程にさまざまな要素が入り込むことがわかってくる。
特にナマよりも「録画」の方が、編集によってどんな「加工」がされるかがわかって興味深い。まず収録が放送のかなり前に行われることからして、出演者に事件が起こった時にテレビ局側があわてるプロセスが分かる。そしてたいていは放送時間よりも長く収録して縮める(時には2倍以上撮る)時に、どsこが残されてどこが削られるかから、編集する側の意図が簡単にわかる。
「公開録画」の募集は、番組内でも告知されるし、各テレビ局のサイトへ行くとまとめて一覧できるので応募もしやすい。
例えば、波田陽区などを輩出した、日本テレビ系「エンタの神様」は、2003年の開始以来、NHKの「爆笑オンエアバトル」とともに、若手お笑い芸人の登竜門になって高視聴率を稼いでいる。
約50分に10数組の出演者のネタがつまっているが、公開録画でフルで演じられたネタの中から、番組でコントや漫才のどこを「つまみ食い」しているかを見れば、番組のねらいも鮮明に浮かび上がる。時には演じたパフォーマンスのほとんどがカットされることさえある。
「エンタの神様」は、ネタ作りに局側や放送作家もからんでいて出演者任せではないので、いかに笑いを効率よく見せるかにかなりの工夫をしている。じっくり芸人を育てるというよりは(結果的に芸を披露する貴重な「場」でもあるので育つ芸人もいるけれども)バラエティ的要素も強い。その中で、編集による「バラエティ」への加工を体感できるだけで、テレビの見方も変わってくるだろう。
ただ問題があって、「エンタの神様」の収録を観覧できるのは18歳から30歳までの女性だけなのだ。ここにも番組の意図が明確に現れている。こういう性別や年齢の制限がある公開番組も多く、ファンだけに絞り込むものもある。
テレビ局はもっと「公開録画」を増やして、編集を視聴者にチェックしてもらうべきなのではないか。