続「国会をもっとテレビの『素材』に!」
宮崎県議会だけが「素材」ではない

[THE BIG ISSUE 2007年4月1日号]

 

 この連載は1回完結が原則なのだけれど、とうしても前回の続きを書きたい。

 前回私は、見どころ満載の国会をテレビでもっと取り上げるべきで、国会は加工してショウアップできる格好の「素材」だ、と書いた。

 ところがそれが見事に実現されたのである。ただし、国会ではなく、宮崎県議会だ。2月21日から始まった県議会の代表質問に東国原英夫(そのまんま東)知事が初登場するというので、ニュース番組やワイドショーはこぞって取り上げた。県議会に過去最高の数のメディアが乗り込んだらしい。

 その中には私が前回のこの欄で提起したような、テレビ的な手法を駆使して、質問と答弁を興味深く分析している局もあり、見ごたえがあった。知事に浴びせられたヤジも文字入りでピックアップし、知事が軽妙にかわすシーンなどは、ほとんどバラエティ番組かと思うほどで、ヤジの質の低さも視聴者に伝わり、政治を身近に感じられるきっかけになりそうな構成であった。

 議会終了後の、論戦した議員と知事のコメントもそれぞれ興味深かったし、アナウンサーとコメンテイターもいつになく多彩な視点で語っていた。

 しかし残念なのは、これが1日目だけで終わりで、翌日知事が苦しんだところなどはもう特集されない。県議会は一問一答方式ではなく、議員がまとめて長々と提起し続ける一括質問方式。知事もそれにあわせて原稿を読み上げるしかないところで、2日目にはいらだちが見られた。

 知事は答弁でも一括質問方式を変えたいと述べ、国会中継を見ていて「どうしてこんなに楽しくないのか」と思っていたので「僕の答弁では寝させないようにしようと思った」と議会後に話している。ここまでフォローすれば、議会のあり方をさらに問ういいチャンスだったのに。

 そして国政の方では相変わらず、ここまで突っ込んだコーナーは見当たらない。要は、知事が元タレントだったから、というのが動機でたまたまつくられたにすぎない「名」コーナーだったのだ。

 ということは、もしこの特集で、知事が失態でもおかせば「やっぱり元タレントだから」というバッシングが起こり、様々なレッテルが貼られ、それをまたテレビは面白おかしく追いかけていくことになる。結局「スキャンダル」と大差ないのだ。

 つまりこの宮崎県議会特集は、形式と内容は一応私の期待通りだったけれども、本来の目的からすれば「似て非なるもの」だったのである。

 テレビ関係者は、話題性がある知事を一時的にセンセーショナルに取り上げるのではなく、国会から地方議会まで、全国の議会をチェックして視聴者に提供する気合いを持ってほしい。間違いなく東国原英夫知事でなくても、テレビ的処理ができる場面ばかりなのだから、視聴率も取れる。さらに議員たちもそのチェックにうかうかしていられなくなるはずだ。宝の山を見過ごす手はない。